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interviewクラブ・サークルからつながりの和を広げよう。


―小寺さんにとって、脚本とはどんな存在ですか?

脚本は人生の原動力です。先にも言いましたが、脚本にはこれまでの経験が落とし込まれています。例えば、作品に登場する人物を書くときには、周囲の人間を想像し、物語の展開(シーン)を考えるときには、自分が経験した心情を投影します。
記憶の箱を開けて、ストーリーを築いていく。それが脚本の作業です。自分の経験が脚本を書く原動力になっているのと同時に、脚本が生きる原動力にもなっているんです。人生に起こったこと全てが脚本の糧になるから、苦い経験があっても乗り越えられるのだと思います。

―やりがいを感じる瞬間は?

一番思い出深かったのは、湊かなえさん原作のテレビドラマの脚本を担当した時です。ドラマの放送を実家のテレビで家族と一緒に見て、自分の脚本が日本中の人に届いているんだと実感しましたね。出来上がった映像作品に対するお客さんの反響も、もちろん嬉しいですし、完成した脚本を監督やプロデューサーに認めてもらい映像化に向けて話が進むと、やりがいを感じますね。
脚本は映像作品として完成するまで、監督やプロデューサー、役者、スポンサー企業の広報担当者など、さまざまな立場の人から評価を受けます。だからこそ、言葉で表現しづらいニュアンスを複数の人と共有するのは本当に大変。その分、面白い映像作品を完成できると達成感がありますね。


―モットーとしていることがあれば教えてください。

脚本の創始者である、世阿弥の「初心忘るべからず」という言葉をモットーにしています。きっと誰しも初めて作った作品は拙く、恥ずかしい思いをするはずです。経験を積んでもその時の羞恥心や謙虚な気持ちを忘れるなという戒めの言葉です。私自身、シナリオ学校に通いだしてから、とんとん拍子にキャリアを重ねていったように見えますが、脚本を書き始めたのが遅く、周りが年下ばかりであることに劣等感を抱いていました。自分の脚本に劣等感を抱いて、なんとか面白くしてやろう、と奮起した当時のエモーションは忘れません。今でも妥協することなく、毎回良い作品を作ろうと心掛けています。40歳になるまでに、日本アカデミー賞を受賞するか、実績を評価され選ばれるNHKの連続テレビ小説の脚本を担当するのが目標です。

―新入生にメッセージをお願いします。

フォレスト・ガンプの一節に“Life was like a box of chocolates. You never know what you’re gonna get.”「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみなければ中身は分からない」という言葉があります。人生は予期せぬ出来事で変化するもの。私の人生も、ART-SOZOとの出会い、東京転勤、コンクールでの受賞など、思ってもみないことがたくさん起こりました。大学を卒業した直後は、就職した会社で一生働き続けると思っていましたし、脚本家になるなんて想像もしていませんでしたから。現状に留まらず、たくさんのことを受け入れながら、努力を続ければ、新たな道が開けるはずです。新入生の皆さんにも、その時感じた自分の好奇心を大切にしてほしい。明確な目標を持たなくてはと焦らなくてもいいんです。自分自身の興味や関心を磨いて、熱中できる、努力できる何かを探す4年間にできればいいと思います。

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